複雑型(単純型)憩室炎には抗菌薬治療は必要か?
急性、軽度、非複雑性憩室炎には抗菌薬治療はプラセボと同程度の効果である。
・急性非複雑性憩室炎患者に抗菌薬治療をすることは、低レベルのエビデンスに基づいている。2つの対照試験では、抗菌薬による予後の改善を示されていない(NEJM JW Gen Med Sep 15 2018 and Am J Gastroenterol 2018; 113:1045; Br J Surg 2012; 99:532)。画像検査により裏付けされた急性非複雑性憩室炎(Hinchey分類1a)で入院した患者180例を、抗菌薬またはプラセボを5~7日間投与する2郡に無作為に割り付けた。SIRSの危険因子≧2、認知機能障害、または最近(7日以内)抗炎症薬を使用した患者は除外した。
▶︎入院期間(≒42時間)、7日または30日の再入院率、手技的介入の必要性(≒2%)、24時間後の平均疼痛スコアには2群間で有意差は認められなかった。有害事象は、頻度は低く、両群で同程度であった。
・急性非複雑性憩室炎の重症度の低い患者は、抗菌薬投与の利点は何も得られなかった。これらは、軽症患者における抗菌薬の使用に疑問を呈するエビデンスの増加に付け加わる。2015年の米国ガイドラインでは、このような症例では抗菌薬の使用を省略することが認められているが(Gastroenterology 2015; 149:1944)、米国ではまだすべての患者に対するルーチンの抗菌薬投与が行われている。
〈憩室炎に関して:重症度の観点から〉
・単純型憩室炎では、外来治療が入院治療と比しても安全かつ安価であることが示されてきている(Ann Surg 2013;00:1–7)。
・Hinckey分類
Stage1:憩室炎、傍結腸or腸間膜内膿瘍形成
・膿瘍<5cm:保存治療
・膿瘍≧5cm:ドレナージ
Stage2:後腹膜 or 骨盤内膿瘍形成:ドレナージ
Stage3:膿性腹水を伴う汎発性腹膜炎:緊急手術
Stage4:糞便性腹膜炎:緊急手術
(N Engl J Med 2007;357:2057-66.)
陶器様胆嚢 NEJM image
先週のNEJM imageに掲載されていた陶器様胆嚢に関して少し掘り下げて調べてみました。
前回に引き続き、日本の先生からの投稿です。
陶器様胆嚢は稀な疾患で、日本の医師国家試験でも「胆嚢癌のリスク」ということでしか出題されないように思います。
症例
83歳男性。主訴は悪心。
現病歴:
既往歴:40歳時 胆石疝痛
身体所見:腹部診察を含めて異常なし。
腹部単純X線:胆嚢の石灰化を認める。
腹部単純CT:胆嚢壁の石灰化とカルシウム結石の多発を認める
(=陶器様胆嚢 porcelain gallbladderに合致する所見)。
悪心(抗菌薬治療によって誘発されていたかもしれない)は治療介入をすることなく、軽快した。胆嚢疾患による症状はなく、手術をせずに管理されることとされた。
〈陶器様胆嚢 porcelain gallbladder〉
基本知識
・陶器様胆嚢は胆嚢壁の石灰化を意味しており、慢性胆嚢炎と関連している。
→① 粘膜全体が石灰化しているか?(Complete intramural calcification)
② 粘膜が選択的に石灰化しているか?(Selective mucosal calcification)
の2つに分類される。
(J Clin Gastroenterol. 1989;11(4):471. )
・陶器様胆嚢の約95%に胆石を認めるとされる。(Gastroenterology. 1966;50(4):582. )
疫学
・陶器様胆嚢は稀で、胆嚢摘出術を施行された0.06-0.08%に認められたと報告されている。
胆嚢癌との関連は?
・あるシステマティックレビューでは、
胆嚢摘出術を施行された60,665患者の内、140名(0.2%)に陶器様胆嚢を認めた。
その陶器様胆嚢を有する患者の内、21名(15%)に胆嚢癌を認めた。
(Arch Surg. 2011 Oct;146(10):1143-7)
・石灰化パターンがSelectiveの方がCompletedよりも胆嚢癌のリスク高い。
・adenocarcinomaが最多(80%)であるが、squamous cell carcinomaも報告されている。
症状
・ほとんどは無症状であるが、胆石による症状を呈することがある。
診断
・偶発的に発見されることが多い。
・腹部単純CTの感度・特異度が最も高い(腹部単純X線、超音波検査で疑う→腹部単純CTという流れ)。
・確定診断は胆嚢摘出術による病理所見による。
治療
・陶器様胆嚢は胆嚢癌のリスク増大と関連しているが、無症候患者の予防的胆嚢摘出術の有効性は未だに確立していない。
・以下の3点を参考に治療方針を決定する。
1, 症状または胆石による合併症
2, 石灰化のパターン(Completed? Or Selective?)
3, 年齢・併存疾患の有無
・有症状であれば胆嚢摘出術を施行することが多い(石灰化パターンがSelectiveであれば無症状でも手術することがある)。
文献:
・症例:N Engl J Med 2020; 383:e86
・Up to date "Porcelain gallbladder"
ST合剤による麻疹様皮疹
BMJ case reportで日本の先生からの報告です!
私も、ST合剤による皮疹は経験したことがあります。皮疹の分け方?表現方法?に対して自信がなく、粘膜診の有無をチェックする程度に留まっています。
これを契機に薬疹の理解を深めたいな.....
〈ST合剤と皮疹〉
・主に尿路感染症で使用される抗菌薬である。他にはPneumocystis jirovecii、Toxoplasma gondii、Stenotrophomonas maltophilia、community-associated MRSAによる感染症で使用される。
・副作用として、皮疹をきたすことがよく知られている。
・皮疹には、単純な発疹、固定薬疹、好酸球増多・全身症状・Stevens-Johnson症候群のような皮疹が含まれる。
〈症例〉
19歳の日本人女性。発熱と皮疹。
1週前に発熱、腰背部痛、尿症状(尿路感染症と合致する症状)に対して, trimethoprim-sulfamethoxazole 160mg/800mg 1日2回 計7日間の治療を開始された。
1週間服用後にびまん性の丘疹性、紅斑性発疹をきたした。
身体所見:T 38.4。びまん性紅斑は顔面・頸部・体幹・上肢・下肢にかけて認められた。粘膜診は認められなかった。
血液検査:好酸球増加なし。肝機能・腎機能は正常範囲。
—————
経過:
ST合剤は中止された。
2日目、解熱し、びまん性の紅斑は改善を示した。
麻疹・風疹 IgM抗体は陰性であった。
7日目には紅斑は色素沈着を残さず、消退した。
診断:
ST合剤による麻疹様薬疹(morbilliform drug eruptions caused by trimethoprim–sulfamethoxazole)
〈麻疹様薬疹 morbilliform drug eruptions〉
・麻疹様薬疹は薬物の副作用で最も多く認められ、薬疹の95%をしめる。
・麻疹様薬疹の特徴:びまん性、対称性の紅色斑状丘疹
・名前の由来通り、麻疹・風疹の皮疹とよく間違われる。
・麻疹様薬疹は原因薬物服用後、4-21日後に出現する。
→ 薬物投与後の時間経過が薬疹とウイルス性発疹との鑑別に重要である。
・麻疹様薬疹は、薬物中止後2日以内に改善し始め、1週間後には消退する。
→薬物中止後の改善もまた、原因薬物の同定の一助となる。
・麻疹様薬物に随伴する症状としては、そう痒感(88%)、発熱がある。
・発熱は麻疹様薬疹(15%)よりもウイルス性発疹(91%)で多く認められた。
オプソクローヌス-ミオクローヌス症候群
症例
高血圧とアルコール使用障害の71歳男性。
3ヵ月間のめまい,複視,運動失調で当院に来院した.
神経診察では運動失調、構音障害、動作時振戦、下肢近位筋のミオクローヌスを認めた。
急速、非規則的、動揺性、多方向の眼球運動が認められ、オプソクローヌスの状態であった。
チアミンを含む初期の血液検査の結果は正常であった。
患者の血清はMa2 IgG抗体陽性であった。
頭部MRIでの所見は目立たず、FDG-PETでは癌の証拠は認められなかった。
抗Ma2抗体陽性脳炎によるオポソクローヌス-ミオクローヌス症候群と診断された.
グルココルチコイド、血漿交換、リツキシマブによる治療が開始され、初期にはオポソクロヌスとミオクロヌスが軽減された。失調は進行し、シクロホスファミドによる追加治療を受けたにもかかわらず、患者は発症から1年後には車椅子を使用していた。
(N Engl J Med 2020; 383:e84より引用)
〈オプソクローヌス-ミオクローヌス症候群〉
基礎知識
・Dr. Marcel Kinsbourneがオプソクローヌス-ミオクローヌス症候群(OMS)に関して初めて供述した。
(J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1962; 25:271-276.)
・オプソクローヌス:水平方向・垂直方向・ねじれの位置の多方向性への眼球運動によって特徴付けられる衝動性眼球運動である。衝動性は急速で、不随意で、リズミカルなパターンに従わない。
・ミオクローヌス:急速な異常運動
陽性ミオクローヌス:ショック様の筋収縮
陰性ミオクローヌス;筋緊張の抑制
*生理的なもの、精神的なものもある。
・OMSは、オプスクローヌス・ミオクローヌス発作・運動失調を特徴とする原因不明のまれな状態である。
→ 傍腫瘍効果または感染症によって惹起された、中枢神経系を標的とした自己免疫性・炎症性の反応。
・OMSは, その臨床的特徴から”dancing eyes-dancing feet”症候群と呼ばれる。
・OMSは、成人例と小児例どちらも報告されている。小児例では約半数が神経芽腫と関連している。
・成人21症例を検討した報告では、主な主訴は浮動性めまい、ふらつき、悪心・嘔吐であった。(Arch Neurol. 2012; 69:1598-1607.)
疫学
・発生率は約1/5,000,000人年で稀な疾患である。(Eur J Paediatr Neurol. 2010; 14:156-161.)
神経芽腫との関連
・小児例では、神経芽腫による傍腫瘍症候群としてOMSを呈する事がある。
・OMSを呈した小児の48%で神経芽腫を認めたという報告がある。(Curr Opin Pediatr. 2010; 22:745-750.)
・対照的に神経芽腫の小児の約2%のみがOMSを呈する。(Childs Nerv Syst. 2010; 26:359-365.)
神経芽腫以外の関連(ウイルス、薬物、外傷、傍腫瘍症候群)
・Mycoplasma pneumonia、salmonellaの先行感染
・中毒、代謝異常との関連も示されている。
・傍腫瘍症候群:肺小細胞癌、乳癌など
治療
文献:
・症例:N Engl J Med 2020; 383:e84(オプソクローヌスの動画あり)
薬物性肝障害 NEJM 総説
〈基本知識〉
・薬物性肝障害(Drug-induced liver injury)は診断と治療が難しい。
・発生率:14-19症例/ 100,000人
・薬物性肝障害の診断は、他疾患の除外が基本であるため、時として困難である。
・診断のポイントは4つ!
① latency:被疑薬の投与時期
② dechallenge:被疑薬中止後の改善
③ rechallenge:再投与による再発
④ phenotype:臨床的特徴
・薬物性肝障害に特異的なバイオマーカーは存在しない。
肝生検、画像、血液学的検査は他疾患の除外に有用である。
・1200以上の薬物が肝障害を引き起こすとされる。
→有用なサイト:LiverTox(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK547852/)
〈薬物性肝障害のタイプ〉
・薬物性肝障害は、直接型(Direct)、特異体質型(Idiosyncratic)、間接型(Indirect)に分類される。
① Direct Hepatotoxicity
・薬物の肝臓に対する毒性に起因する。
・頻度:多い
・量との関連:あり
・予想可能か?:可能
・再現性:あり
・潜伏期間:短い(1-5日程度)
② Idiosyncratic Hepatotoxicity
・肝臓への毒性はほとんどない薬物による。
・頻度:稀(1/2000 - 1/100,000)
・予測可能か:不可能
・量との関連:なし
・再現性:なし
・肝細胞障害型、胆汁鬱滞型、混合型に分類される。
→ R ratio(=ALT比/ALP比 *ALT比= ALT/正常上限, ALP比= ALP/正常上限)
肝細胞障害型:R ratio ≧5
胆汁鬱滞型:R ratio ≦2
混合型:R ration 2-5
③ Indirect Hepatotoxicity
・薬物の毒性よりも薬物の作用に起因する。
舌側縁部の白斑の鑑別
〈症例:NEJM Image Challenge June 18, 2020〉
26歳、男性。2ヶ月前からの筋痙攣、体重減少、不快感を伴う味覚変化を訴えて救急外来に来院した。身体所見では、舌の側面に白く、鋭く区切られ、付着しているプラークが認められた。
診断は?
A, 口腔毛状白板症 (Oral hairy leukoplakia)
B, 口腔扁平苔癬 (Oral lichen planus )
C, ヒトパピローマウイルス感染症 (Human papillomavirus infection)
E, 尿毒症性口内炎 (Uremic stomatitis)
〈解答〉E 尿毒症性口内炎(Uremic stomatitis)
・尿毒症性口内炎は長期的な尿毒症の稀な症状の一つ。
・本症例は、膀胱尿管逆流による二次性の慢性腎臓病の既往を有していた。
・血液検査ではクレアチニン 22 mg/dL(正常範囲 0.7-1.5)、BUN 225 mg/dL(正常範囲 9-20)であった。
・血液透析により症状の軽快を認めた。
〈尿毒症性口内炎 Uremic stomatitis〉
・臨床的には、頬粘膜、口腔底、舌の背側・側面に分布する白色斑と表現される。
・臨床的には、口腔毛状白板症(Oral hairy leukoplakia)に類似することがある。
・尿毒症性口内炎は以下の4つに分類される。
→紅斑性、潰瘍性、出血性、角質増殖性
・治療は主に血液透析を行い、必要ならば防腐性のある洗口剤や抗菌薬・抗真菌薬による口腔衛生の向上を図る。
(QJM: An International Journal of Medicine, 2017, 247–248 )
〈口腔毛状白板症 Oral hairy leukoplakia〉
・口腔毛状白斑は、主に舌の側縁部に生じる良性で無症候性の白色斑であるが、まれに口腔内の他部位に生じることがある。
・EBVと口腔毛状白板症には関連があるとされている。
・EBV誘発性口腔毛状白板症は、HIV感染の最初の臨床症状であることもある。
・HIV seropositive患者では後天性免疫不全症候群(AIDS)への進行の指標となる可能性がある。
(International Journal of Dentistry Volume 2016, Article ID 4941783, 6 pages )
t-PA関連の口舌血管性浮腫
〈症例〉
NEJM Image Challenge June 11. 2020
来院90分前に発症した左半身脱力で救急外来を受診した78歳男性。右中大脳動脈領域の脳梗塞と診断され、治療が開始された。
数分後の診察で患者の舌の変化を認められた。最も適切な診断はどれか?
1, t-PA関連血管性浮腫
2, 舌動脈塞栓症
3, 舌ジストニア
4, 片側性舌下神経麻痺
5, Melkersson-Rosenthal症候群
〈解答〉1
・本症例の治療は気道確保は必要なく、抗ヒスタミン薬とグルココルチコイドの静脈内投与のみであった。
・舌の腫脹は改善したが、脳梗塞後の神経障害は残存していた。
〈tPA関連の口舌血管性浮腫〉
Stroke. 2016;47:1825-1830.
【分かっていること】
・口唇血管性浮腫(Orolingual angioedema:OLAE)は急性の口唇と舌の腫脹であり、自然に消失するが、上気道閉塞の危険性があるため、生命を脅かす可能性がある。
【分かっていないこと】
・症例報告や小規模なシリーズの報告はあるが、大規模な臨床研究では、OLAEの予測因子を特定することを目的としているが、3ヵ月後の転帰については報告されていない。
・OLAE患者の転帰は、上気道閉塞による死亡率の増加に影響される可能性がある。
【本研究の目的】
tPA中または後のOLAEを生じた患者と生じなかった患者の予後を比較
【研究デザイン】
Patients 脳梗塞に対してtPAを投与された患者
Exposure OLAE発症者
Comparison OLAE非発症患者
Outcome 予後
【研究方法】
・923例の脳梗塞に対するtPA投与症例を対象とした。
・OLAEを、局所的な出血では説明が不可能で、数時間以内に完全に消失する局所性の舌や口唇の腫脹及び浮腫と定義した。
・tPAのプロトコールでは、看護師は血栓溶解中は15分毎、輸液終了後は30分毎に患者の舌と口唇を検査するように指示されていた。この間に舌や唇の腫れや浮腫があった場合は、直ちに脳卒中病棟の上級神経内科医と集中治療チームに連絡し、抗ヒスタミン剤治療と酸素療法とともにコルチコステロイドの点滴を直ちに開始した。挿管するかどうか、r-tPAを中止するかどうかは、症例毎に神経内科医と担当の集中治療医の判断に委ねられていた。
【結果】
・20例(2.2%)にOLAEを発症した。
・18例では脳の虚血病変とは反対側に発症し、2例では診断時に浮腫が明らかに局在化していなかった。
・OLAEはr-tPAのボーラス投与後15~105分後に発症し、平均70分であった。
・OLAEの発症から完全に回復するまでの時間は,17例では回復時期を正確に特定することが困難であったため,信頼性に欠けるものであった.
信頼できると考えられた3例では,2例で90分,1例で225分であった.
・OLAE患者はアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I;OR、3.8;95%CI、1.6-9.3)の投与を有意に多く受けており、アテローム血栓性脳梗塞(OR、2.7;95%CI、1.0-7.7)である可能性が高かった。
・OLAE患者はいずれもアンジオテンシン受容体拮抗薬の投与を受けていなかった。
・OLAEのある患者とない患者では、その他のベースラインに差はなかった。
・OLAEのある患者は、ない患者に比べて島梗塞である場合が多かった(7/19 vs 8/77;OR、5.0;95%CI、1.5-16.5;P=0.004)が、部分梗塞については差がなかった(4/19対29/77;OR、0.4;95%CI、0.1-1.5;P=0.172)。
・喫煙者、高用量のr-tPAを投与された患者、悪性梗塞を発症した患者では、OLAEを発症する頻度が高い傾向があった(0.10>P値>0.05)。
・OLAEを有する患者のうち,mRSスコアが0~1(8/20対396/903;adjOR,0.9;95%CI,0.3~2.1),mRSスコアが0~2(10/20対514/903;adjOR,0.8;95%CI,0.1~1.8),死亡(3/20対134/903;adjOR,1.1;95%CI,0.3~3.8)の患者の割合に3ヵ月間の有意差は認められなかった。
【他文献のReview】
50 抄録を選択。
・OLAE患者は、血栓溶解前にACE-Iを投与されている可能性が高く(OR、8.6;95%CI、5.5-13.5)、動脈性高血圧(OR、2.5;95%CI、1.4-4.4)、糖尿病(OR、1.8;95%CI、1.01-3.3)、および高コレステロール血症(OR、2.0;95%CI、1.2-3.2)であった。
【考察】
・r-tPAをin vitroで治療濃度で使用すると、ヒト血漿中のキニンが大量に生成される。
・r-tPAに関連するOLAEは、プラスミン介在性のブラジキニンの放出に直接起因する。
・我々の研究と複合解析の結果は、ACE-I投与中の患者は血栓溶解療法中にOLAEのリスクがあるという仮説を強く支持するものである。ブラジキニンはACEによって不活性代謝物に変換され、この酵素の阻害はブラジキニンのレベルの上昇をもたらす。
・遺伝性血管性浮腫の急性発作の治療に適応のある選択的ブラジキニンB2受容体拮抗薬であるicatibantは使用しなかったが、選択肢の一つになるかもしれない。
・我々の研究はまた、島梗塞患者は血栓溶解時にOLAEのリスクがあるという仮説を支持するものである。
・考えられるメカニズムとしては、島梗塞が自律神経失調症を誘発する可能性がある。この仮説は、脳卒中擬態を含む脳卒中以外の適応症でr-tPAを静脈内投与された患者ではOLAEの発生がまれであることからも裏付けられている。
・また、メタ解析では、OLAEの発生と既往の動脈硬化性高血圧との間に統計的な関連があり、糖尿病や高コレステロール血症との間には低い程度で関連があることがわかった。個々のデータがなく,ACE-Iの存在について調整することができず,これらの患者は一般集団よりもACE-Iの存在下にあることが多いため,これらの関連がみられたと考えられる。
・OLAEは、早期に発見され、適切に治療された場合にはアウトカムに影響を与えない稀な合併症である。
・脳卒中の静脈内溶血による治療を受けた患者50人中1人にしか発症しない(95%CI、47人中1人~62人中1人)が、この割合は島梗塞の場合は10人中1人、ACE-Iによる治療を継続している場合は6人中1人にまで増加する。
・生存者では、長期予後は他の患者と同様である。
【本研究のポイント】
② 半数の患者では血栓溶解中に,残りの半数では輸液終了後すぐに発症した
③ OLAEの多くは病変と反対側から発症したことが示された.
④ OLAEはACE-I梗塞や島梗塞の患者で発生しやすい