〜日々の勉強報告〜@日本三景

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Acute focal bacterial nephritis(AFBN)のまとめ

・以前は、acute lobar nephroniaとして知られていた(膿瘍形成なしに腎臓に限局する感染症
 1979年にRosenfieldらによって提唱された。(Radiology. 1979;132(3):553-561. 
・AFBNは非複雑性腎盂腎炎と腎膿瘍の中間的な疾患概念である。腎膿瘍の初期段階である可能性がある。
 (Obstet Gynecol. 1988;71(Suppl 3 Pt 2):510-511.
・AFBNは現在、症例報告や少数のケースシリーズでしか報告されておらず、稀な疾患である。
 
⦅臨床症状⦆
・literature reviewでは、発熱(98%)、白血球上昇が最も多く認められた。また腎盂腎炎と同様に側腹部痛(80%)も多く認められた。排尿困難や下部尿路感染症の症状はわずか18%であったと報告されている。
▶︎上部尿路感染症の症状だけでは腎盂腎炎とAFBNは鑑別できない。
・また、7%で腹部腫瘤の触知も認められたとされている。
BMC Infect Dis. 2017 Apr 4;17(1):240.
 
 
⦅原因微生物⦆
・AFBNので尿培養は59%で陽性(41%が尿培養陰性になり、E.coliが最多で検出された。
・AFBNの19%で血液培養が陽性になり、69%がE.coliであった。
BMC Infect Dis. 2017 Apr 4;17(1):240.
 
⦅基礎疾患⦆
女性に多い(2:1)。
・年齢は小児〜高齢者のどの世代でも起こりうる。
・AFBNには、糖尿病、妊娠、尿路奇形、過去の呼吸器感染症、腎移植後、飲酒・薬物の使用、自己免疫疾患、AIDSが関与。
生来健康であっても、AFBNは起こりうる。
BMC Infect Dis. 2017 Apr 4;17(1):240.
 
⦅CT⦆
・造影CTは診断に有用
造影効果が低下した不均一な楔状の腎実質が特徴である。病変は単一もしくは多発している。➡︎ 非複雑性腎盂腎炎、腎膿瘍との鑑別に重要(*治療方針が異なる)
(Maeshiro T, et al. BMJ Case Rep 2014. より引用)
cortical rim sign陰性がAFBNと腎梗塞の鑑別に重要である。(BMJ Case Reports. 2014;2014:bcr2014205199. doi:10.1136/bcr-2014-205199.)
・病変周囲の造影効果がない、壊死濃度でないことは膿瘍形成との鑑別に有用かもしれない。
 
⦅超音波⦆
・病変はhypoまたはhyperechoicである。
・病変はドップラー血流が低下している。(Eur J Ultrasound. 2001 Jul; 13(3):201-4.
・いくつかの症例では、CTでAFBNの所見を認めるが、超音波では認められなかったと報告されている。BMC Infect Dis. 2017 Apr 4;17(1):240.
上部尿路感染症の症例では、全例に超音波検査を施行すべき!!
 
⦅治療⦆
・抗菌薬静注が推奨される。
・Empiric therapyではE.coliと他のGNRをカバーできる抗菌薬を選択する。
・通常の腎盂腎炎と比較して、治療反応性が幾分悪く、治療期間は、腎盂腎炎より長くなる
 ▶︎ 3週間未満の治療期間では再発を起こすことが多い
   疾患の治療経過(疼痛の改善など)を考慮して決定する。
BMC Infect Dis. 2017 Apr 4;17(1):240.
 
参考文献;
BMC Infect Dis. 2017 Apr 4;17(1):240.  PMID 28376724
  AFBNのliterature review
BMJ Case Reports. 2014;2014:bcr2014205199. doi:10.1136/bcr-2014-205199.   PMID 24895397
    AFBNの症例報告(臨床写真)、特徴的な画像