〜日々の勉強報告〜@日本三景

地域医療に従事する新米医師たちの勉強報告のブログです。良医になれるよう奮闘していきます。ご指導お願いします。

高カルシウム血症の鑑別診断

・血清Caの正常範囲:8.6-10.4 mg/dL

⦅血清Caの重症度⦆
mild: 10.5-11.9 mg/dL
moderate: 12.0-13.9 mg/dL
severe: >14.0 mg/dL

⦅Ca代謝
・骨 99%、細胞内液 1%、細胞外液 0.1%
・体内のCaは、消化管吸収腎臓排泄によって規定される
・血中Ca:3分画に分けられる
  1, 遊離蛋白と結合 45%
  2,  陰イオンと結合 10%
  3, イオン化 45%
 *イオン化されているものだけが生理学的に活性化している
・イオン化Ca↑、総Ca→:アルカレミア、アシデミア、Caキレートの存在
・イオン化Ca→、総Ca↑:低Alb血症、高Alb血症、多発性骨髄腫
・補正Ca=総Ca+0.8×(4-血清Ca)

⦅臨床症状⦆
①一般的症状:易疲労感、倦怠感
②中枢神経症状:焦燥感、抑うつ傾向、せん妄、錯乱、意識障害
③尿濃縮障害:多尿、腎不全
④循環器系:血圧上昇、QT短縮
⑤消化器系:高ガストリン血症→食欲低下、悪心、嘔吐、胃潰瘍
⑥その他:偽痛風、皮膚掻痒感

*高Ca血症の心電図変化:QT短縮  重症例ではST上昇型心筋梗塞に類似する

・軽度高カルシウム血症(12mg/dl以下)ではほとんど無症状かあっても脱力感、易疲労感などの非特異的症状が主となる。
・高度高カルシウム血症(14mg/dl以上)では傾眠や意識障害などの中枢神経症状、脱水や腎不全などを呈しやすくなる。➡︎内科的緊急症

⦅鑑別診断⦆
まずはPTHの測定
 ・PTH 依存性(PTH正常〜高値)
 ・PTH非依存性(PTH低下)
PTH依存性高Ca血症
    最多、原因:副甲状腺腫・過形成・癌(稀)、MEN1・2と関連
    副甲状腺癌s/o:触知可能なら頸部腫瘤、高度高Ca血症、PTHの著名な上昇(正常上限の3-10倍以上)
    慢性の二次性副甲状腺機能亢進症が是正された時(血液透析が始まった時)
    末期腎不全
 ・家族性低Ca尿性高Ca血症
    副甲状腺におけるCa感受性受容体の過剰発現、後天性も報告されている
    尿中Ca↓
PTH非依存性高Ca血症
①薬物性
 ・ミルク-アルカリ症候群
    高Ca尿症+高Ca血症、腎機能障害、大量のCa(少なくともCa 2g/day)と吸収可能なアルカリの摂取(炭酸Ca)
 ・ビタミンA, D
 ・サイアザイド系
 ・リチウム
   リチウム服用患者の15%で生じる
②悪性腫瘍
 ほとんどの高Ca血症を来す悪性腫瘍は、乳癌、肺癌、多発性骨髄腫
 ・PTHrP:乳癌、扁平上皮癌、腎細胞癌、卵巣癌、non-Hpdgkinリンパ腫、子宮体癌
 ・局所的な骨融解:乳癌、多発性骨髄腫、リンパ腫
 ・1,25(OH)2vitD:リンパ腫、卵巣腫瘍(germ cell tumor)
③肉芽腫性疾患
 ・サルコイドーシス
 ・結核
 ・多発性血管炎性肉芽腫症
 ・ヒストプラズマ症
 ・Crohn病 
④内分泌疾患
 甲状腺中毒症
 ・副腎不全
 ・褐色細胞腫
 ・先端巨大症
⑤他の原因
 ・不動症候群

参考文献: Frameworks for Internal Medicine p100