陶器様胆嚢 NEJM image
先週のNEJM imageに掲載されていた陶器様胆嚢に関して少し掘り下げて調べてみました。
前回に引き続き、日本の先生からの投稿です。
陶器様胆嚢は稀な疾患で、日本の医師国家試験でも「胆嚢癌のリスク」ということでしか出題されないように思います。
症例
83歳男性。主訴は悪心。
現病歴:
既往歴:40歳時 胆石疝痛
身体所見:腹部診察を含めて異常なし。
腹部単純X線:胆嚢の石灰化を認める。
腹部単純CT:胆嚢壁の石灰化とカルシウム結石の多発を認める
(=陶器様胆嚢 porcelain gallbladderに合致する所見)。
悪心(抗菌薬治療によって誘発されていたかもしれない)は治療介入をすることなく、軽快した。胆嚢疾患による症状はなく、手術をせずに管理されることとされた。
〈陶器様胆嚢 porcelain gallbladder〉
基本知識
・陶器様胆嚢は胆嚢壁の石灰化を意味しており、慢性胆嚢炎と関連している。
→① 粘膜全体が石灰化しているか?(Complete intramural calcification)
② 粘膜が選択的に石灰化しているか?(Selective mucosal calcification)
の2つに分類される。
(J Clin Gastroenterol. 1989;11(4):471. )
・陶器様胆嚢の約95%に胆石を認めるとされる。(Gastroenterology. 1966;50(4):582. )
疫学
・陶器様胆嚢は稀で、胆嚢摘出術を施行された0.06-0.08%に認められたと報告されている。
胆嚢癌との関連は?
・あるシステマティックレビューでは、
胆嚢摘出術を施行された60,665患者の内、140名(0.2%)に陶器様胆嚢を認めた。
その陶器様胆嚢を有する患者の内、21名(15%)に胆嚢癌を認めた。
(Arch Surg. 2011 Oct;146(10):1143-7)
・石灰化パターンがSelectiveの方がCompletedよりも胆嚢癌のリスク高い。
・adenocarcinomaが最多(80%)であるが、squamous cell carcinomaも報告されている。
症状
・ほとんどは無症状であるが、胆石による症状を呈することがある。
診断
・偶発的に発見されることが多い。
・腹部単純CTの感度・特異度が最も高い(腹部単純X線、超音波検査で疑う→腹部単純CTという流れ)。
・確定診断は胆嚢摘出術による病理所見による。
治療
・陶器様胆嚢は胆嚢癌のリスク増大と関連しているが、無症候患者の予防的胆嚢摘出術の有効性は未だに確立していない。
・以下の3点を参考に治療方針を決定する。
1, 症状または胆石による合併症
2, 石灰化のパターン(Completed? Or Selective?)
3, 年齢・併存疾患の有無
・有症状であれば胆嚢摘出術を施行することが多い(石灰化パターンがSelectiveであれば無症状でも手術することがある)。
文献:
・症例:N Engl J Med 2020; 383:e86
・Up to date "Porcelain gallbladder"