〜日々の勉強報告〜@日本三景

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鼠径リンパ節腫脹の鑑別診断:MGH case record

Case 11-2021: A 39-Year-Old Woman with Fever, Flank Pain, and Inguinal Lymphadenopathy

 
N Engl J Med 2021; 384:1448-1456
 
今回は、MGH case records "Case 11-2021: A 39-Year-Old Woman with Fever, Flank Pain, and Inguinal Lymphadenopathy"から勉強した内容をまとめてみました。
 
Dr. Richelle C. Charlesによるリンパ節腫脹の鑑別診断の考え方⦆
・リンパ節主張の鑑別診断は多岐に渡る。感染症、自己免疫性疾患、悪性腫瘍、そしてその他の様々な病態を含む。
・リンパ節腫脹の初期評価は、局在性か全身性かを判断することが一般的である。
・この初期評価に加え、病歴・身体所見(疫学的な手がかりを明らかにする;猫との接触渡航歴、虫刺され、リスクの高い性交渉など)、及びリンパ節の遠位部の病理学的特徴を把握することで、大半の症例は診断にたどり着く。
・両側鼠径リンパ節腫脹の原因は、性感染症のような中央部位からの広がり、または両下肢への病原体の侵入が考えられる。
 
⦅鼠径リンパ節腫脹の原因⦆
下肢または局在性の感染症
・化膿性リンパ節炎(staphylococcal or streptococcal
結核性リンパ節炎
・ネコひっかき病(Bartonella henselae
・ノカルジア症
・スポロトリコーシス
・野兎病
 
・鼠径リンパ肉芽腫
・軟性下疳
・梅毒
・性器ヘルペス
悪性腫瘍
白血病・リンパ腫
転移性腫瘍(メラノーマ、外陰部、子宮頸部、陰茎、肛門、直腸)
自己免疫性疾患
全身性エリテマトーデス
皮膚筋炎
関節リウマチ
サルコイドーシス
 
 
BARTONELLA HENSELAE INFECTION(Cat scratch disease)⦆
・猫、特に子猫は、B. henselaeの主な保菌者であり、唾液を介して、あるいはひっかき傷を介して細菌感染をきたす(猫の約50%がB. henselaeの血清陽性)。( N Engl J Med 1993;329:8-13. J Infect Dis 1995;172:1145-1149.
・一般的には、接種後3~10日後に引っ掻いた部位に皮膚病変(丘疹、小水疱、膿疱など)が形成されるが、このような病変が常に見られるわけではなく、また適切に識別されるわけでもない。(Am J Dis Child 1985;139:1124-1133.
・接種から約2週間後には、猫ひっかき病の特徴である感染部位に近接した局所リンパ節腫脹を発症する。(Am J Dis Child 1985;139:1124-1133.
・リンパ節腫脹の最も多い部位は、腋窩、滑車上、頸部、鎖骨上、顎下である。(Am J Dis Child 1985;139:1124-1133.
・全身性リンパ節腫脹はまれだが、最大で3分の1の症例が2つ以上の解剖学的部位を侵す。(Am J Dis Child 1985;139:1124-1133.
・人への感染のメカニズムとしては、感染したノミの糞が猫の爪を汚染し、人の傷口に生菌を接種することが考えられる。
・予防には、猫の治療よりもノミの駆除が重要である。(J Clin Microbiol 1996;34:1952-1956.