〜日々の勉強報告〜@日本三景

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市中発症敗血症のうち耐性菌はどの程度いるか? JAMA Network Open

Prevalence of Antibiotic-Resistant Pathogens in Culture-Proven Sepsis and Outcomes Associated With Inadequate and Broad-Spectrum Empiric Antibiotic Use

JAMA Netw Open. 2020;3(4):e202899. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.2899

〈知られている事実〉
・敗血症は生命を脅かす重篤な病態であり、入院患者の主な死因である。
・早期の抗菌薬治療が良好なアウトカムにつながるとされており、各国のガイドラインでは敗血症が疑われる患者では広域抗菌薬のエンピリック療法が推奨されている。
 
〈分かっていない事〉
・敗血症患者のうち、MRSA緑膿菌などの耐性菌がどれほど存在するのか?
 
〈目的〉
培養陽性の市中発症敗血症における耐性菌の割合と不適切・不必要な広域抗菌薬の使用のリスクを解明するため
 
〈方法〉
Study design
 ・Cerner Health Factsを用いた後ろ向きコホート研究
 ・2009年1月から2015年9月の期間に入院して20歳以上を対象
 退院患者やInternational classification of disease, Tenth revision, ICD-10-CMを満たさない患者は除外
 ・104の施設から17430人の市中発症敗血症患者が対象
 
対象
 ・血液培養陽性の市中発症の敗血症を対象
 ・除外:培養陰性、転院患者、長期間施設入所中、院内発症の敗血症
 ・不適切抗菌薬:採取された培養から、初回投与された抗菌薬に対して感性を示さない微生物が検出された場合、不適切抗菌薬とした。
 ・不必要抗菌薬:広域抗菌薬投与をされたが、広域抗菌薬がターゲットとする微生物が検出されなかった場合不必要とした。
 
Outcomes
 ・Primary outcome:不適切・不必要抗菌薬投与と院内死亡率の関連性
 ・Secondary outcome:院内発症の急性腎障害、C difficile感染症
 
〈結果〉
Patients characteristics
・尿路感染症 48.9% (8515)、呼吸器 32.9% (5728)、腹腔内 13.6% (2373)、皮膚軟部組織 10.3% (1787)であった。
・耐性菌保有患者は、より多くの併存疾患を有し(P<0.001)、呼吸器感染症に罹患しており(P<0.001)、呼吸器培養陽性が多く(P<0.001)、昇圧薬や(P<0.001)、人工呼吸器(P<0.001)を必要とし、ICUへの入室を必要とし(P<0.001)、院内死亡が多かった(OR 1.38, 95%CI 1.26-1.50)
 
・広域抗菌薬を投与された患者における耐性菌の検出割合

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・広域抗菌薬の不適切、不必要投与とoutcomesとの関連性

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▶︎広域抗菌薬の不必要投与は院内死亡率と関連していた(P=0.007, 95% CI 1.06-1.40)。
 また、不必要投与ではC difficile感染症が多かった(P=0.04, 95%CI 1.01-1.57)。
 
〈結論〉
・ほとんどの市中発症敗血症の患者は耐性菌を有していない。
・エンピリック治療として広域抗菌薬が投与されることが多い。
・不適切、不必要な広域抗菌薬は高い死亡率と関連している。
・より一層の賢明な広域抗菌薬の使用と耐性菌を検出する迅速キットの開発が必要である。