〜日々の勉強報告〜@日本三景

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DKA/HHSの診断と治療

〈疫学〉
・好発年齢
 DKA:18-44歳(56%)、45-65歳(24%)、20歳未満(18%)
・死亡率
 成人のDKA:1%未満 *高齢者や重篤な状態にある患者では死亡率5%以上
 HHS:5-20%(DKAに比して死亡率が高い
 
DKAの病態〉
極度のインスリン欠乏インスリン拮抗ホルモンの増加により、高血糖(≧250-300 mg/dL)、高ケトン血症、アシドーシスをきたした状態。
DKAの誘引としては感染症を常に考える。
 その他に、インスリン中断(怠薬)、急性膵炎、心筋梗塞、脳血管障害、薬剤がある。
 また、初発の1型糖尿病DKAとして発症することもある。
DKA/HHSに寄与する薬剤としてcorticosteroids、thiazides、交感神経作動薬、pentamidine、抗精神病薬が知られている。
・2/3が1型糖尿病、34%が2型糖尿病である。
1型糖尿病の若年患者で、DKAが再発している際には摂食障害の併存を考慮する。約20%程度に認められる。
 
DKA・HHSの診断〉
HHSは数日から数週にかけて進行するが、DKAはもっと早く進行する。
DKAとHHSの典型的な症状は、多尿、多飲、口渇、体重減少、嘔吐、脱水、意識障害である。
・身体所見では皮膚ツルゴール低下、Kussumaul呼吸(@DKA、頻脈、低血圧がある。
・意識状態は清明から無気力や昏迷まで多様であるが、HHSでは昏迷をきたしていることが多い。
DKAとHHS共に先行感染を伴うことが多いが、循環血漿量減少のため正常体温か低体温になっていることがある。
 ▶︎重篤な低体温予後不良であることを示す。
DKAの50%以上悪心・嘔吐・びまん性腹痛を認めるが、HHSでは稀とされる。
 
DKA・HHSの診断基準
・初期評価としては、血糖、BUN、クレアチニン電解質、浸透圧、血清・尿中ケトン体、尿定性、動脈血ガス、分画を含めた血算、心エコー、胸部X線、尿・喀痰・血液培養を提出する。
DKA代謝性アシドーシスの程度意識障害の程度により重症度が分類される。
1/3以上の患者でDKAとHHSのoverlapが認められる。
DKAの約10%に血糖≦250 mg/dLの”euglycemic DKAと言われる病態が存在する。
  ▶︎元々は若年者1型糖尿病患者に対して言われていた概念だが、
   最近、SGLT2阻害薬使用中の2型糖尿病患者にも報告されており、注意を払う必要がある。(Diabetes Care 2015 Sep; 38(9): 1638-1642
・HHSの特徴は重度の高血糖意識障害を伴う脱水で、代謝性アシドーシスを伴わない
 
・白血球数 10000-15000程度の上昇はDKA自体で説明可能であるが、25000を超える上昇を認める場合は感染症などの評価が必要。
・血清Naは血糖上昇により見かけ上での低値を示していることが多い。
血漿浸透圧と意識障害の程度は相関するとされており、浸透圧上昇なしに意識障害を認める糖尿病患者では他の原因を考慮しなければならない。
・血清Kは上昇していることが多い(インスリンの欠乏やアシデミアによる)。
・血清Pに関しても上昇していることが多い。
・高アミラーゼ血症はDKAの21-79%で認められる。
 
DKAの診断の際にはアルコール性ケトアシドーシス、飢餓によるケトーシスと区別する必要がある。
 
DKA・HHSの治療〉
・治療のポイントは、脱水補正高血糖の是正電解質の補正である。
DKAの治療では、血糖の補正の方がケトーシスの補正よりも早期に達成される。血糖の補正が6時間で、ケトーシスの補正が12時間とされる。
・血清Kは病態改善に伴い著名に低下するため注意を払う。
・また、治療の合併症としては脳浮腫が有名であるが、小児例の0.3-1.0%で認められ、成人例では極めて稀である。発症すれば死亡率は20-40%とされる。治療はマンニトールや人工呼吸器管理が必要である。
 
〈ketosis-prone type 2 Diabetes〉
・African-Americanを中心に報告されている病態。
・発症時の特徴としては
 ① 誘引のないケトーシスもしくはケトアシドーシスで発症
 ② 新規に診断される成人の大半は肥満で、40歳前後の中年に多い(男性に多い)
 ③ 新規診断時の症状の進行は比較的急速で、1ヶ月前後の間に多飲、多尿、体重減少などの症状を呈する
 ④ 家族歴あり
・短期間のインスリン治療で寛解に至る。
 
 
参考文献:
Diabetes Care 2009 Jul; 32(7): 1335-1343